手すき和紙製造・販売 「紙すきの村」は細川紙はじめ 創作活動の素材としての和紙を 製造・販売しています。


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  コラム6 和紙に使用されている化学薬品
 
 現在、多くの人は「和紙=伝統的な製法で作られている」という印象を持っていると思います。しかし、これまでのコラムでも書いたとおり、実際には輸入原料を含む様々な原料から和紙は作られ、機械化も進んでいます。また、作業効率や、紙の性能、性質を変えるために化学薬品も広く使われています。

 これら化学薬品を使うことで、価格を抑えることができ、用途に応じた使いやすさの向上が期待できる一方で、和紙本来の長期保存性などの特性が失われることもあります。一口に和紙と言っても様々な用途があるわけですから、薬品を利用すること自体は否定できないと思いますが、こういった情報を知らぬまま、和紙に対する固定観念だけで和紙を利用すること良いことではないと思います。

 そこで、今回のコラムでは和紙に使用されている化学薬品を取り上げ、最後に当工房で使用している薬品を公開します。和紙の購入を検討される際の参考にしていただければと思います。

 なお劇物に指定されている薬品については「*」をつけておきます。  

 
1、伝統製法に変わる代替品としての化学薬品
   ・ソーダ灰(炭酸ナトリウム)
 ・苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)*
 ・石灰

 これら2種類は原料を煮る作業で使われます。当工房では国産楮にはソーダ灰を、外国産原料には苛性ソーダを使っています。レポート3、で化学薬品を使わない 伝統的な煮熟の様子を取り上げていますが、これは非常に手間のかかる作業で、一度に多くの原料を煮る事は難しい上、灰を集めることも現在では困難です。そのため、ほとんどすべての原料は上記いずれかの方法で煮ています。

 ・アクリパーズ
 ・アルコックス

 これらはトロロアオイの代替品として使われている、「化学ネリ」です。
 手すき業者ではアクリパーズの方が多く使われているようですが、当工房ではアクリパーズ以外にもアルコックスと言う薬品もあります。かつては実際に使用は せず、不測の事態に備えての緊急用、あるいは学校や施設の方への紹介のために 持っている程度でしたが、下記のトロロアオイ保存薬品にシックハウス症候群の原因物質が含まれることから、一部製品での使用を始めています。

 *2020年補記
 2019年より、トロロアオイの生産減などを考慮し、通常製造時においてもアクリパーズの使用を始めました。
 

2、原料などの腐敗防止目的で利用される化学薬品
 ・クレゾール*
 ・ホルマリン*

 これらのうち、クレゾールはトロロアオイの保存を目的に利用されます。トロロアオイは植物の根ですので、生の状態ですと腐ってしまいます。かつては夏場には紙すきを行っていなかったのでトロロアオイを保存する必要ありませんでした。現在は通年で紙すきを行う紙屋のほとんどがトロロアオイを薬品に漬けて保存しています。

 同様にホルマリンもトロロアオイの保存に使われます。また、ホルマリンは夏季に打解済み原料の保存に使われることもあります。

 これらを使用した場合、和紙への影響は報告されていませんが、いわゆる「シックハウス症候群」の原因物質であるため、化学物質に敏感な方は注意が必要かもしれません。
(使用前に流水で洗浄しているため、一般的や用途での問題の報告は来ていません。)

 これら以外の防腐剤として、

 ・硫酸銅*と石灰を混ぜた水溶液

 を利用している場合も少なからずあるようでが、あまり見かけません。
 

3、和紙の性質・雰囲気や使用感を変えるための薬品
   和紙作りにおける化学薬品の使用実態では、和紙を用途に適した状態にするために使用される化学薬品が最も多いかもしれません。以下紹介していきます。

 ・次亜塩素酸ナトリウム*

 原料を漂白する際に使用します。
 漂白された原料から作られた紙はその白さゆえ、幅広い用途で使用し易くなります。一方では塩素漂白された紙は強度が弱くなり、特に日光に当たると黄ばんでしまいます。よって長期の保存には適しません。

 ・各種化学染料

 原料や出来上がった紙を染色するのに使います。
 和紙では、シリアス系染料などの塩基性染料を使うのが一般的です。また、下記のサイズパイン、硫酸バンドと併用することが多いため、長期の保存には適しません。

 上記の次亜塩素酸ナトリウムで漂白した原料に入れることで、さらに白さを強調する蛍光染料というものもあります。

 ・サイズパイン

 上記染料が、水分でにじみ出すのを止める働きがあります。
 また、書画系の紙などで墨やインクのにじみやかすれ具合を抑え、書き味を調整するために使用することもあります。

 ・硫酸バンド(硫酸アルミニウム)

 上記染料、サイズパインは単体で原料の繊維に付着しにくいため、薬品を繊維に定着させるために使用します。
 名前のとおり硫酸、つまり酸性です。和紙は酸により劣化するため、この薬品を使用すると紙の劣化が早くなります。よってこちらを使用した和紙も長期の保存には向きません。

 ・紙力増強剤
 ・填料

 これらは一般的には洋紙を作る際に使われるもので、当工房では使用していませんので、詳しい成分は分かりませんが、和紙に使用している場合もあるようなので紹介しておきます。
 それぞれ、紙力増強剤は紙の強度を増すための薬品、填料は紙の印刷適正や筆の走りを良くする薬品です。

 *2020年補記
 2019年より紙力増強剤(紙を丈夫にする)として、印刷適正を高めるため、カチオンでんぷんの使用を始めました。

 
4、当工房における使用薬品
薬品名 使用目的 使用頻度 備考
苛性ソーダ(水酸化ナトリウム) 原料煮熟

A

 
ソーダ灰(炭酸ナトリウム) 原料煮熟

B

 
石灰(参加カルシウム) 原料煮熟 E  
クレゾール トロロアオイ保存 A  
ホルマリン トロロアオイ保存/原料消毒 夏期B
冬季D
 
次亜塩素酸ナトリウム 原料漂白 A  
シリアス染料 原料染色 B  
直接染料 原料染色 B  
反応染料 原料染色 B  
サイズパイン にじみ止め C  
硫酸アルミニウム にじみ止め・染料等定着剤 C  
アクリパーズ トロロアオイ代用 A  
アルコックス トロロアオイ代用 D  
カチオンでんぷん 紙力増強 C

*使用頻度について A:高い 〜 E:ほとんど使わない

 

 

 

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