和紙作りにおける化学薬品の使用実態では、和紙を用途に適した状態にするために使用される化学薬品が最も多いかもしれません。以下紹介していきます。
・次亜塩素酸ナトリウム*
原料を漂白する際に使用します。
漂白された原料から作られた紙はその白さゆえ、幅広い用途で使用し易くなります。一方では塩素漂白された紙は強度が弱くなり、特に日光に当たると黄ばんでしまいます。よって長期の保存には適しません。
・各種化学染料
原料や出来上がった紙を染色するのに使います。
和紙では、シリアス系染料などの塩基性染料を使うのが一般的です。また、下記のサイズパイン、硫酸バンドと併用することが多いため、長期の保存には適しません。
上記の次亜塩素酸ナトリウムで漂白した原料に入れることで、さらに白さを強調する蛍光染料というものもあります。
・サイズパイン
上記染料が、水分でにじみ出すのを止める働きがあります。
また、書画系の紙などで墨やインクのにじみやかすれ具合を抑え、書き味を調整するために使用することもあります。
・硫酸バンド(硫酸アルミニウム)
上記染料、サイズパインは単体で原料の繊維に付着しにくいため、薬品を繊維に定着させるために使用します。
名前のとおり硫酸、つまり酸性です。和紙は酸により劣化するため、この薬品を使用すると紙の劣化が早くなります。よってこちらを使用した和紙も長期の保存には向きません。
・紙力増強剤
・填料
これらは一般的には洋紙を作る際に使われるもので、当工房では使用していませんので、詳しい成分は分かりませんが、和紙に使用している場合もあるようなので紹介しておきます。
それぞれ、紙力増強剤は紙の強度を増すための薬品、填料は紙の印刷適正や筆の走りを良くする薬品です。
*2020年補記
2019年より紙力増強剤(紙を丈夫にする)として、印刷適正を高めるため、カチオンでんぷんの使用を始めました。
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