手すき和紙製造情報の解説
 
有限会社 久保製紙
紙すきの村〜久保昌太郎和紙工房〜
 
原料

原料の概要

原料は大きく非木材木材に分けられる。

非木材原料が一般的 で伝統的なな和紙の原料であり、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)が有名。

非木材原料 楮(こうぞ)

楮の概要

小川町で最も多く使われている原料。桑科に属し、和紙の原料としては1年ものの皮のみを使用。皮は黒皮、甘皮、白皮の3層からなり、用途に応じて削り落とす。

出来上がった和紙は丈夫で通気性に富む。また書画に用いると強いにじみが生じる。

産地

特徴・価格・用途など

地場産 昭和中期頃に産業としての生産は終了。技術保存目的での栽培や自家消費分の製造に留まる。甘皮分の多い、飴色の紙に仕上がるとされる。
労働として適正な価格(埼玉県最低賃金が時給で735円)を乗せると現状の原料価格の倍程度になるため、ボランティアなどによる協力でできる限りの生産に留まる。
四国産 国産主要産地の1つ。
甘皮を残した処理をするため、かつての地場産楮の雰囲気に通ずるところもあり、当工房では国産原料の主力として採用。
那須産 国産主要産地の1つ。価格も高いが、最高品質の原料と呼ぶ声もある。
甘皮を残した処理をしていないため(白皮楮のみ流通)、当工房では採用せず。
タイ産 日本で最も多く流通している原料と思われ、当工房においても最も消費量が多い原料。
厳密には楮とは異なる植物であり、樹脂成分を多く含み、製品化した際に樹脂が混入することも有る。
最も安価で価格は四国産の1/8程度。
中国産 国産楮の代用品として比較的古くから流通している。植物としては国産楮に良く似るが若干繊維が弱いとも言われる。また、処理にバラつきがある、枯れた楮の混入があるなど、人為的な面での問題も。
価格は国産楮の1/3〜半値程度だが、処理のバラつき(ゴミの混入など)によるちり取りの手間を考えると、製品化した際にはそれほどの価格差は無くなる。
当工房では問屋関連の注文に国産楮の代用品として配合。
パラグアイ産 近年輸入が広がっている原料。国産楮(黒皮)の代用品として当工房でも採用。
肉厚で歩留まりもよく、雰囲気としては国産に劣らないと感じることもある。厳密な調査では国産楮に比べ強度で劣るらしいが、当工房ではあまり強度を求めない書画用の和紙に国産楮と配合しての使用。
三椏(ミツマタ)

三椏の概要

現行紙幣の原料としても有名で、ジンチョウゲ科に属す。処理は白皮がほとんど。滑らかで光沢のある紙に仕上がる 反面、強度では楮に劣る。用途としては書画、印刷に適し、小川町では中学校の卒業証書の仕上げに使われている。

産地

特徴・価格・用途など

四国産 当工房では使用せず。
中国産
雁皮(ガンピ)

雁皮の概要

ジンチョウゲ科に属す。栽培が難しく、野生のものを原料とする。処理は白皮の状態にすることがほとんど。三椏同様、楮ほど丈夫ではないが、滑らかな仕上がりの紙とな る。書画に好まれ、印刷物への適正もある。また、出来上がった紙に害虫が付きにくい。小川町ではほとんどがフィリピンからの輸入の原料に頼る。

本来、畑で作ることが不可能で、野生のものを収穫するものとされてきたが、近年畑での栽培に成功したとの情報も有る。

産地

特徴・価格・用途など

国産産 当工房では使用せず。
フィリピン産 厳密には雁皮とは異なる植物(サラゴという)。非常に廉価であり、当工房でも書画系の和紙の原料として採用。
楮と似た植物だが、強度に劣る。黒皮のまま使用し、主に襖の下張りなどになる。
中国からの輸入和紙に多く使用されている。非常に書き味が良いとのことだが、処理に手間がかかる。
日本画の原料としては最高峰とも言われるが、処理に手間がかかる。
わら半紙の原料として多く流通していたが、近年は減少。主に書画系の和紙に配合される。
木材原料

木材原料の概要

木材原料木材パルプと呼ばれ(単にパルプとも言う)、主に洋紙の原料として使用されるが、安価な原料として一部の和紙にも利用されている。丈夫さに 著しく欠けるため、流し漉きでは補助原料として楮と配合して使われる。

書画用紙ではにじみが強い楮と配合することで、にじみ、かすれなどの、書き味を調整することができる

和紙の原料としては、ビーターにかけるだけの処理済のものを使用

晒しパルプ 漂白されたもの。
未晒しパルプ 無漂白のもの。
クラフトパルプ 無漂白で、未晒しパルプよりもさらに濃い色のパルプ。
煮熟
(しゃじゅく)

煮熟の概要

 アルカリを加えた熱湯で原料を煮、皮の繊維を柔らかくする。

木灰 最も伝統的な製法の煮熟に用いる。ヨモギやソバ殻の灰が最も適すと言われる。
入手が困難なこともあり、一部伝統的製法を除き使用は稀。
石灰 木灰に次ぐ伝統的製法とされる。
石灰自体は水に溶け残るため、濾過が必要で、使用は一般的ではない。
ソーダ灰 国産楮の煮熟においては最も使用頻度が高い。繊維への負担が少なく、紙にした際に比較的強度を保つことができる。
苛性ソーダ タイ産など外国産原料の煮熟に使用する、強アルカリ薬品。
また、黒皮楮を苛性ソーダ煮熟処理し塩素漂白を施すことで黒皮ごと漂白され、黒皮を落とす作業を省くことができる。
漂白

漂白の概要

 和紙原料を用途に応じて白くする作業。
 未晒しの和紙、天日晒しの場合は紫外線により白くなるが、塩素の場合は黄ばむ。
未晒し 漂白をせずアクを抜いただけのもの。
天日晒し 流水に2、3日浸すと、水中の酸素と紫外線により白く晒される。この漂白では黄ばみが起こらない。
塩素漂白 塩素の漂白作用による。容易できれいに仕上がるが、紫外線と反応し黄ばみの元になる。
叩解
(こうかい)

叩解の概要

 煮て柔らかくなった皮の繊維を叩いてほぐし、綿状にする作業。打解機、ビーターの使用が一般的。

打解機 動力を用い、重しの付いた木を回転させながら落下させ、皮を叩く。
叩解機 ビーターともいう。ミキサーのような機械で、皮の繊維をほぐす。水とともに叩くため、細かい繊維の流出がある。
手打ち 上記の作業を、樫の大棒(打解)、小棒(叩解)を使い行う。繊維の流出が少ないため、細かい繊維まで含んだ紙になる。
染色

染色の概要

ビーター時に染めるものと乾燥後に染める方法がある。自然のものでは草木染だが、一般的にはシリアス系化学染料 など化学薬品を使う。塩素漂白とあわせて行われることが多く、日に当たると退色の起こるものもある。

先染め ビーターの中で繊維を均一に染め上げる。出来上がった和紙もムラのない均質な染まり具合となる。
後染め ぼかし染めや板締めなど、模様のついた和紙となる。
漉き込み

漉き込みの概要

 和紙を漉く際に紙の中に模様として漉き込むもの。

粗打ち楮 雲竜紙などスジの多い紙になる。
楮黒皮 大和チリなど黒い斑点模様の入った紙になる。
異素材 桧や杉の皮、藁、紅花などの素材を漉き込んだ和紙。植物性のものがなじみやすく、動物性のもの(絹やウール)はなじみにくい。
抄造
(しょうぞう)

抄造の概要

 漉く方法=原料をシート状にする作業のこと。伝統的製法としては流し漉き・溜め漉きが一般的だが、流通量としては機械抄きがほとんど。
流し漉き 漉き桁(けた)という枠に漉き簀(す)をはさみ、水を汲み、揺すり、流すという作業を繰り返す漉き方。簀に乗った紙の元は紙床に重ねられていく。 均一で薄く丈夫な紙を作ることができる。
溜め漉き 枠に金網を貼り付けた道具を主に用い、一度汲み、揺すり、水が切れるのを待って、紙床に重ねる。流し漉きと違い、水を汲みかえる作業、水を流す作業が無い。 一般的にははがきなどの厚紙の製造に適す。
流し込み 桶などに解いた原料を、網のついた枠に流し込む。一枚ものになるため、枠のまま自然乾燥。 特厚の紙や凹凸の有る紙を作ることができる。
機械抄き 抄紙機により大量生産される。機械の場合「抄く」、手漉きの場合「漉く」と表記されることが多い。
現在では手漉きと見分けがつかないほど精巧な機械製和紙もある。
半機械式 流し漉きや溜め漉きのうち一部を機械化した製法。汲みこみを省いた方式や圧搾・乾燥(解説は後述)を省いた製法などがある。
圧搾

圧搾の概要

 積み重ねた紙床を板ではさみ、圧力をかけて水を絞る作業。かつてはてこの原理による脱水だったが、現在では油圧ジャッキを使用する。
乾燥

乾燥の概要

濡れた状態の和紙(湿紙)を一枚ずつ紙床からはがし、板に貼り付ける作業。上下の紙は接してはいるが、繊維同士の絡みあいが無いためはがれる

天日乾燥 蒸気乾燥とも言われる。鉄またはステンレス製のパネルに熱湯もしくは蒸気を満たし、その熱で温まったパネル表面に湿紙を貼る。仕上がりは平滑で、固めの紙になる。
鉄板乾燥 板干しとも言われ、日光により乾かす。板によっては板目の残る場合もある。
鉄板乾燥よりも柔らかい紙になり、漂白をしていない紙の場合は紫外線により晒され、やや色が薄くなることがある。
自然乾燥 流し込みなどで行われる。乾燥時の紙の縮みを生かすために行うこともある。
加工

加工の概要

 出来上がった紙を用途に応じて後処理を施す作業。
コンニャク加工 コンニャク糊をお湯で溶き、和紙に塗った後、必要に応じてもみ込む。強度が増し、しわの付いた和紙となる。
柿渋加工 刷毛などで表面に柿渋を塗ることで水分に強い紙となる。
ドーサ引き 刷毛などで表面にドーサ(にかわ)を塗ることで画材として適当なにじみ具合に調整する。
裏打ち 裏から別の紙を貼り、強度を増す。
 
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