和紙が環境にやさしい理由として、自然環境の中で比較的容易に循環
(再利用)できる素材であるということが考えられます。 ただし、この循環は「伝統的製法」の場合に成立しまするものであって、「近代的製法」の場合には、一部成立しない場合があることを最初に書いておきます。
では、伝統的製法における和紙の循環について、まずは下図をご覧ください。
図では、和紙作りにおいて最も多く利用されている原料である、「楮」をモデルにしていますが、木の皮を使う、その他の原料でもこの循環は成立します。
この循環の一部(再生紙など)は近代の洋紙でも可能ですが、和紙と近代の洋紙(以下洋紙と呼びます)の大きな違いは「薬品」と「熱量」です。
この違いは伝統的和紙が、「木の皮(靭皮)」を使うのに対し、洋紙は木の芯まで使うことに由来します。
まず、伝統的和紙の製造に必要な薬品は楮を煮るのに必要な「草木灰」です。
この「草木灰」は時代を経るにしたがって「石灰」、「ソーダ灰」、「苛性ソーダ」と代替品が登場しましたが、「苛性ソーダ」以外のものは薬品としての強度は弱く、畑に撒くことによって、煮た後のアクや楮のカスが肥料として畑に還元される仕組みになっていました。
また、煮る時も間伐材や和紙製造に不要になる楮の芯を燃料にでき、沸騰後2〜3時間煮るだけで済みます。
これに対し洋紙は硬い木を煮溶かす必要があるため、「苛性ソーダ」などのより強い薬品を使い、必要な熱量も多くなります。
次に、再生紙としての和紙の特徴ですが、再生紙として作り直さずに、2次利用をしていた点が挙げられます。現在は少なくなりましたが、かつては墨などがついたままの和紙を襖やだるまの下張りといった見えないところで使っていたようです。これは、和紙が強度に優れ、複数回利用しても耐えられたということです。
また、伝統的和紙は強度のわりに再生も容易でした。これは洋紙のように、にじみ止め(水が入りにくくなる)などの薬品を添加しないため、水に入れるか、もう一度煮直せば繊維状にしやすいためです。
このような再生和紙は反古(ほご)紙や宿紙(しゅくし)と呼ばれ、古くは平安時代から製造されていました。つまり、伝統的和紙の循環は1000年以上も昔から受け継がれてきたものなのです。
|