『和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術』登録勧告について
28日、文化庁より「政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に提案していた『和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術』について、事前審査を行うユネスコ補助機関が『登録』を勧告した」と発表がありました。
該当銘柄である「細川紙」製造元として、たくさんのお祝いのお言葉頂いたこと、略儀ながらこの場を借りて御礼申し上げます。
そして、日ごろから和紙を取り扱って頂いている問屋・小売店・利用者の皆さま、製造を支えて頂いております原料農家の方々と原料問屋さん、簀桁などの道具職人の皆様へも心より感謝申し上げます。
さて、今回のユネスコ登録勧告にあたり、和紙の文化的な評価が高騰することは容易に想像がつきます。しかし、紙づくりにかかわっておりますと、文化的な評価と利用者の評価が時に相反するものとなることがあります。
現に、無形文化財細川紙がすべての方にとって「使いやすい」紙であるとは言い切れず、人によっては木材パルプを使用した紙、漂白剤を使用した紙のほうが好まれるケースも多々あります。
当工房では伝統製法を基礎としつつ、その時代、使う人に合った紙を作り続けることを理念としてまいりました。それは、今後も変わることはありません。伝統的なもの、そうでないと言われるもの、いずれも利用者にとっての選択肢であってほしいと思っています。
和紙は使う方あってのもの。
文化的な評価を大事にされる利用者の方、使用感や利用方法で紙を選ぶ利用者の方、和紙を後世に伝えるためにはいずれも大切な方々です。
たとえ、それが私たちの工房の紙でなくとも、利用者の皆様が自分にとっての良い紙と巡り合えること、心よりお祈り申し上げます。
末筆に、「細川紙」の重要無形文化財指定要件についてご紹介させて頂きます。
一、原料はこうぞのみであること。
二、伝統的な製法と製紙用具によること。
1、白皮作業を行い煮熟には草木灰又はソーダ灰を使用すること。
2、薬品漂白は行わず、填料を紙料に添加しないこと。
3、叩解は、手打ち又はこれに準じた方法で行うこと。
4、抄造は、「ねり」にとろろあおいを用い、竹簀による流漉きであること。
5、板干し又は鉄板による乾燥であること。
三、伝統的な細川紙の色沢、地合等の特質を保持すること。
<筆者注釈>
*細川紙製造の「技術」が認定されているため、紙そのものが文化財ではない。
*地域の中において「甘皮を残した紙が細川紙と呼ばれること」が共通認識としてあるならば、それを「細川紙」と呼ぶことについては問題ない。ただし甘皮を残したものを、「重要無形文化財」の名のもとに扱うことは違反である。
*本来は指定団体である「細川紙技術者協会」の正会員が製造することが望ましいが、正会員の指導・監修のもとで製造されたもので、上記の条件を満たすものであれば、重要無形文化財の技術のもとで作られたものとみなし、重要無形文化財の名とともに紙を置くことについては不問とする。
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